2012年8月20日月曜日

シャルルドゴール空港に到着。税関を抜けてホールに出ると、ガイドや運転手さんらしき出迎えの人たちが、わんさか詰めかけております。
皆さん手にした氏名やツアー名を書いたカードを差出してくれます。ついついアルファベットの文字に目を走らせますが、むろん私を出迎えに来てくれている人はいません。

ちょっと淋しい気分で、スーツケースを押しながらRER(郊外電車)の駅に向かいます。
すると10歳前後の子どもを連れた黒人が私と並んで歩きながら、話しかけてきました。
「どこから来た、中国?」
「日本です」
「そりゃあ偶然だ。今度東京に行くところ。ジャポン大好きよ」
なんだかやけに愛想がいい。
いろいろと英語で話しかけてくるので「ジュ ヌ コンプラン パ フランセ」
(フランス語わかりません)と答えてやり過ごそうとしました。

しかし行く手をふいに迷彩服姿の警官たちがふさいで、こっちに来るなとこわい顔をして通せんぼが始まりました。どなたか偉い方のための警備なのでしょう。
「RERの駅にはどう行けば――」
「そんなことは知ったこっちゃない」
マシンガンを持った男が私の言葉をさえぎって、はき捨てるように言いました。

フランスって官僚主義が強そうやなあ、と思いつつ、あたりを見回していると、
「道よく知ってる。安心ね」
さっきの黒人が寄ってきて、ついて来いというそぶり。
いやいやそれはまずいでしょう。
「そうだ、上の階に上がって向こう側に」と思ってエレベータの前に立つと、やっぱり親子も私の横に立ちました。

「日本に行く参考にしたい、教えてくれ。日本のお札は大きいか?
なぜか財布を取り出し、ぎっしり詰まったドル札を見せつけようとします。
こんなときは無視をすべきでしょうが、
「日本の札は大きいから、そんな財布には入りきらんよ」と言ってしまう私です。
「そうか、聞いてよかった。実物を見せてくれ、持ってるだろ」
そうきたか。なるほどね。
でもさすがに私も、そこまで人がよいわけではありません。
きっぱりと断りました。

黒人の男はちょっと悲しそうな表情を見せました。黙って私の顔を見つめていた子どもの目が印象的でした。かわいい顔をしているんです、その子が。
もし私が財布を取り出したりすれば、どんな手を使って盗むつもりだったのでしょうか。
ガイドブックに「地下鉄で子どもスリ」といったトラブル例が載っていますから、男が私の気を引いている隙に、子どもがスリ取るのでしょうか。
きっとあざやかな手際なのでしょう。
見たかったな。
いえいえ、そんなことはありません。

それにしても、こんな手口にひっかかる人がいるのでしょうか。
たしかに男は人懐っこくて、一見好人物に見えました。
でもガイドブックのトラブル例に、これは載ってなかったし、
あんまり商売がうまくいってないのかもしれません。
男の財布に入っていたドル札は、1ドルとか小額紙幣ばかりだったしなあ。
あれあれ、いつの間にかへんな同情心が…… 
詐欺師の手口に半分くらいひっかかってしまっていたのかも?
やれやれでした。

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