2012年8月20日月曜日

パリでの一週間はあっという間に過ぎ、ベルリン経由でスイスに来ています。
またも事件に遭遇しました。チューリヒ空港からベルンへの列車で、無賃乗車の男が捕まるのを目撃しました。

男は私の2列前の席に座っていました。検札の車掌が前方からまわってきましたが、平然としていました。
車掌がドイツ語で「乗車券拝見」と言い、それからもう一度フランス語で話しかけました。
男がなにか返事をすると、車掌がとつぜん大声を張り上げました。
「切符をもってない、金もないんだな。それで一等車とはあきれたもんだ! すぐに(2階建車の1階に)下りて、そこで待ってろ」
男は悪びれたふうもなく立ち上がって、下りていきました。

しばらくすると階下から車掌の怒鳴り声が聞こえてきました。
「ここに住んでないのか? トルコ人だか何人だが知らないが、住所がないんだな。なら俺にはどうすることもできん。警察を連絡するから、このままここにいろ!」

次の停車駅が近づいてきました。ベルンです。私は荷物を持って、階段を下りようとしました。
下を見ると、男が階段に腰をおろしているので通ることができません。
「すみませんが、通してもらえませんか」
私が声をかけると男が立ち上がりました。50がらみの大きな男です。

列車が停車して、ドアが開きました。
警官が待機しているといった様子はありませんでした。
男はなにごともなかったかのように、人ごみのなかに消えていきました。

検札のときも悠然としていましたし、この手段で交通機関を利用するのは、初めてではないのかもしれない、ふとそんな気がしました。一文無しだというのを、車掌は本気で信じたのでしょうか。

スイスに来たのは初めてです。空港も駅も列車も、どこもかも清潔で手入れが行き届いています。ヨーロッパの経済危機とは一線を画しているだけあるなという印象をもちました。3月に行ったローマや今回のパリとはかなり印象が違います。
なんとなく場違いなものを目にしたような気がしました。この車掌は鷹揚なのか、面倒を避けたかっただけなのか。

なにもかもきちんとしているように見えるのは、表面的なものなのか、それとも……。 それはこらからの5泊のあいだに考えてみたいです。

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