2011年6月5日日曜日

メテオラ



イドラから水中翼船でピレウスに到着。郊外電車でアテネまで。
インターシティ(急行)に乗り換えてカランバカへ。
直行列車は1日2本しかないので、無事に乗ることができて一安心。
およそ5時間をかけて、内陸へと進みます。

前の席は出発まぎわに飛び乗ってきた背の高いもじゃもじゃ頭の東洋人。
笑顔が人なつっこく「ニホンジンですか」と聞いてくるので、
「もしかして韓国人?」と聞くと、中国人とのこと。
順玉さんのお姉さんが教えていた香港の工科大学の学生だと言うので、
お姉さんを訪ねて香港へ行き、大学のプールで泳がせてもらったことなどを
思い出す。
「メテオラを見に行くんでしょう?」とたずねると、
「メテオラってなんですか」という返事。
「ほら山の上に修道院があって……」
「そうそれそれ、モンクがいるところ」
ホテルの予約もしてないですよ。おれってstupidだからと、てんで屈託がない。

インターネットで調べつくし、予約できるものはすべて予約して、
スケジュールどおりに移動している私は、ずいぶん窮屈な旅をしているものだ、
と心の中でため息をつく。

私だって25年前に初めてギリシャを訪れたおりは、なんとなくクレタ島行きの
フェリーに乗り込んで、船中で出会ったドイツ人カップルの車に同乗させて
もらい、漁村の民宿で一週間、いっしょに過ごしたりした。
アイルランド人の船乗りと夜の浜辺で酒盛りしたり、鶏の首を落とすようにと
ナタを渡されたものの、こわごわふり下ろすと、ゴムのように跳ね返されて
しまったこと、そのときの手の感触、しかたなく思い切りふり下すと、
首のない鶏が騒ぎ立てたことなどを、まざまざと思い出すことができる。

あてのない旅がしたい。
などと考える年老いた自分がいる。

無意識のうちに若さにしがみつこうとしているのだろう。
一日中、山道を徒歩で修道院めぐりをした。
後ろからきたタクシーが、わざわざ停まってくれても乗らなかった。
そのせいできょうは腰痛をこじらせて、立つのも座るのも一苦労。
悲鳴をあげながらアクロポリスの丘にのぼる私がいる。

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